「あんたも、そちら側か。」パート1

「あんたも、そちら側か。」私は、このセリフを二人の人から云われました。

一人は、90代の義母。
私は、夫を亡くしてから、4年後。縁あって再婚しました。
相手の母親と同居でした。色々あってこの再婚は、わずか5ヶ月で終わりました。

義母は、骨折で入院していました。退院して同居する事になりました。認知症も少し入っていました。

義母との関係は、良好でした。一緒に時代劇を観たり、週4回デーサービスを利用していました。

義母の頭がハッキリしている時は、色々な話をしました。時には、デーサービスに行きたくないと駄々をこねました。

ある夜の事です。夫は、出掛けて留守でした。
私は、義母を早く寝かせたくて、どうしようか思案していました。
時々夜更かししました。明くる日は、デーサービスです。
私は、2階で寝ていました。
もう寝るからと言っても、好きにどうぞと言って寝る気配がありません。そのまま独りで放っては置けません。

義母は、度々転倒を繰り返していました。
私は、リビングでうたた寝のふりをしました。
義母の部屋は、リビングの横の和室です。

私が眠ったら、諦めて自分の部屋に帰ると思っていました。

私が眼をつむって暫くしてからです。「ガタン」と
凄い音がしました。しまった。
ほんの少し眼をつむっている間に、義母は、転倒していました。

義母は、骨折の後、歩行器を利用していました。
どうやら何か取ろうとした様です、

私を起こしたら悪いと考えて、声をかけなかった
そうです。

歩行器と反対側に、義母は転倒していました。

私は、顔面蒼白です。義母は、痛がって座り込んだままです。夫に連絡し、救急車を呼ぶことになりました。
義母は、頑固でした。救急隊の人が来ても、身体を触ろうとすると、拒否しました。

又、病院に戻される。そう考えたのだと思います。
夫の説得にも、耳を貸しません。 私は、無駄と思いながら、夫の加勢をしました。その時です。

「あんたも、そちら側の人間か。あんただけは、違うと思っていたのに。」とても悲しげに怒りを込めて言ったのです。

私は、どちらかと云うと、いつも義母の味方でした。注射嫌い、医者嫌い。義母の意志を優先し、夫を説得しました。
でも、今回は、怪我の状況が解らない。救急隊の側につきました。

結局、救急隊の人は、諦めて二人がかりでベッドに移動させて帰りました。

その後は、アザだけで大したこと無くホッとしました。
私は、自分が付いていながら転倒してしまった事に自分を責めてオロオロしていました。

後で、義母がそんな風に思っていたのだと気付き
申し訳ないと思いました。

色々あって別れましたが、義母の事は、好きでした。別れて3ヶ月後、訃報を聞きました。

今では、懐かしい思い出です。
さて、もう一人、同じセリフを言った人がいました。次回は、その話をします。