赤ちゃん人形

中学時代のお話です。
喘息も、かなり楽になり、身体も、私なりには成長しました。
中学校は、家から遠く、歩いて20分ぐらい。
ある日、通学路にあるショウインドーが、目に止まりました。

田舎にある唯一の家具屋でした。窓越しに見えたのは、乳母車に乗った赤ちゃんの人形でした。
それは、とても愛らしく私は、いっぺんに虜になりました。

値段の確認をしたら、私のお小遣いでは、買えません。
あの頃の私は、洋服に関心は無く、チクチクしない服なら、何でも良かったのです。
スカートだけは、好きではなかったのです。
足は、細すぎてガニ股。
制服が好きではなかったけど、毎日何を着るか
考えなくていいのは、楽でした。

お小遣いのほとんどは、本代に消えました。
物に対する執着心は、ほとんどありませんでした。

なのに、赤ちゃん人形に一目惚れでした。
私は、通学の度に赤ちゃん人形を手に入れる
状況を想像しました。
部屋に飾る、手に取る。あの乳母車は、動くのだろうか?
あの赤ちゃんの愛くるしい顔。
彼女(何故か女の子と決めてました。)が、赤ちゃんから成長していく。

私には、たかが人形の範疇を超えてました。
赤ちゃんが大きくなって私と遊ぶ。ピノキオの様に人間になる。

私は、通学の人形を眺めるが楽しかったのです。

ある日、人形がありませんでした。売れてしまったのか、単に模様替えして、お店の中にいるのか。

でも、私は、満足でした。
十分楽しめたからです。

もし、私が簡単に手に入れていたら、多分手に入れた事に満足して、すぐ飽きたと思います。

ほこりにまみれた赤ちゃん人形が想像出来たからです。

その時に、手に入れるだけが、幸せではない。
目的より、プロセスが大事と思いました。


本日も、有り難うございました。