「あんたも、そちら側か。」パート3

車椅子になって戻ってきたYさん。職員は、皆彼女は、歩けないと思い込んでいました。

病院は、認知症の人は、早く退院させたがります。
かなり迷惑な存在だからです。治療はするけど、介護は出来ません。

Yさんは、いきなり歩いたのです。しかも伝え歩きです。いつ転倒してもおかしくない状態です。
意志の疎通が、ほぼ出来なくなりました。

じっとしていられない。彼女は、野生の動物の様に
やりたい様にやりました。トイレに閉じ籠ったり、
止める職員を蹴ったり、殴ったり。
と云っても力はありません。
暴れると転倒のリスクが増えます。

入浴は、二人がかりになりました。私は、彼女とやり取りする時は、職員ではありません。

私も、一匹の生き物の様な積もりになります。
彼女の目をじっと見ます。絶対目を離しません。彼女の目が怒りと恐怖に支配されています。
「大丈夫。怖くないから。」彼女の目が少しだけ
変化します。「あんた、誰?」
「私は、貴女のボスだよ。守ってあげるから 」

勿論、これは、心の中の会話です。彼女は、少しだけ私を受け入れてくれます。何度も目で会話を重ねました。

時には、私の気を惹こうとして、立ち上がります。
わざと無視すると、諦めて静かになります。

私は、彼女との無言のやり取りを面白いと感じました。感情豊かで、ストレートな彼女。

会話は、ほぼ出来なくなっていました。そんなある日です。彼女の皮膚状態に異変がありました。

元々、彼女の皮膚は、いつも赤く痒いのか掻き傷だらけでした。
でも、いつもと違う水泡を、別の職員が見つけたのです。
続きは、次回にします。