ベートーベンの中岡先生、パート5

あの日は、11月の初旬の夕方でした。
私は、小学校2年生でした。

この日は、具合が悪く、喘息で休んでました。
発作も、治まりかけて、まどろんでました。

当時、N君というガキ大将が、子分を連れて毎日家に遊びにきてました。
彼の目当ては、私ではなく、母でした。

母は、学校に行く事が多く、子供達の人気者でした。

さて、本題に戻ります。

N君と母の話声がします。

突然、母の怒鳴り声 「ウソばっかり、何でそんなウソつくの? 帰りなさい。もう、家には遊びに来ないで。」

N君は、母の剣幕に驚いて 、遊びに来なくなりました。

私は、こんな母を見るのは、初めてでした。
険しい顔のまま、私には何も言いませんでした。


その日の夜、真実が解りました。
夕方のニュースで、中岡先生の訃報が伝えられました。
新婚旅行先の旅館が、火事になった事。煙草の不始末が原因だったこと。
先生と新妻が犠牲になった事。

母は、食い入る様にニュースを見てました。
N君は、いち早く知らせに来たのです。

私は、何をどう理解していいか分かりませんでした。
もう会えない。何度もリフレインが聞こえる。
「死んだんだ」悲しいよりも、ボンヤリ夢の中の出来事のよう。

私は、葬式も、お通夜も参加出来ず、変わらない日常に埋もれていきました。

私の現実は、苦しいか、苦しくないか、それ以外は、夢の中の出来事でした。世界は、私とは無関係に見えました。

母も、変わりない日常を送って見えました。その心情は、私には分かりませんでした。

明日は、中岡先生のその後を書いてみます。
こう、ご期待下さい

本日も、有り難うございました。